鴨林軒ハテナ支店

文芸同人の鴨林軒です。

2021-07-01から1ヶ月間の記事一覧

【戯曲】饗宴 第一幕(広瀬喜六)

後輩:学部一年生の美大生。洒落っ気のない機能性重視の服。顔立ちは中性的で柔和な体つき。身長は決して低くない。髪も伸びなりになっていて、男ならば長いが、女ならば短いくらい。ゴムで後ろにわずかにまとめている。ブルーライトカットの伊達眼鏡をかけ…

【小説】巡礼の年(西文貴澄)

巡礼の年を迎えた。16歳の時に『方法序説』を読んでから、18歳になったら旅に出ると心に決めていて、私はそれを巡礼の年と呼んでいた。 巡礼と言っても、メッカに行くわけでも、お遍路さんに行くわけでもない。そういう、目的を持った崇高な旅ではなく、ただ…

【小説】蟻とバス(南後りむ)

午後四時を過ぎたころ、駅前のバス停には十名ほどの列ができていた。その最後尾に、学校帰りの男子高校生がスマホを片手に立っていた。その視線は当然ながらスマホの画面――会員制交流サイトとやらが表示されていた――にやられていた。その目は特に熱心になに…