鴨林軒ハテナ支店

文芸同人の鴨林軒です。

【戯曲】饗宴 第一幕(広瀬喜六)

後輩:学部一年生の美大生。洒落っ気のない機能性重視の服。顔立ちは中性的で柔和な体つき。身長は決して低くない。髪も伸びなりになっていて、男ならば長いが、女ならば短いくらい。ゴムで後ろにわずかにまとめている。ブルーライトカットの伊達眼鏡をかけ…

【小説】巡礼の年(西文貴澄)

巡礼の年を迎えた。16歳の時に『方法序説』を読んでから、18歳になったら旅に出ると心に決めていて、私はそれを巡礼の年と呼んでいた。 巡礼と言っても、メッカに行くわけでも、お遍路さんに行くわけでもない。そういう、目的を持った崇高な旅ではなく、ただ…

【小説】蟻とバス(南後りむ)

午後四時を過ぎたころ、駅前のバス停には十名ほどの列ができていた。その最後尾に、学校帰りの男子高校生がスマホを片手に立っていた。その視線は当然ながらスマホの画面――会員制交流サイトとやらが表示されていた――にやられていた。その目は特に熱心になに…

【小説】言い訳(唐桶つばめ)

ため息をついてスマホの画面を閉じる。提出予定日を超過しているにもかかわらず一切の連絡もよこさないとは、どうやら完全に無視を決め込む算段のようだ。 ラインで何度連絡を取ろうとしても既読無視を繰り返し、電話にも一切応じるつもりはないらしい。こち…

【小説】庭たずみ(広瀬喜六)

記号の与えられない感情をしまっておくには人間はちっぽけだよ。なんてきざなことを言った彼はどこへ行ったか知れない。彼は、ちょうど彼自身が思っていたよりもずっとちっぽけな人間だったのかもしれない。 田坂さんは、記号の役割は個別的な差異に気が付く…

【小説】アドベントカレンダー(西文貴澄)

昔、イーサーさんがアドベントカレンダーを買ってきてくれた。 クリスマスツリーの形をした箱がカレンダーになっていて、日付のところを押してくりぬくと中から小さなチョコが出てくる。暖かいところに置かれていたのか、出てきたチョコはどれも表面が白っぽ…

【企画説明】2021年6月度のテーマを発表します(南後りむ)

6月がやってまいりました。今月から、鴨林軒は本格始動します。 先週あたりによくわからぬ自己紹介小説が投稿されていたかと思います。まだお読みでない方は、ぜひそちらにも目を通してみてください。 さて、その自己紹介小説にて、鴨林軒のコンセプトとい…

【自己紹介】隠れ家的料理屋「鴨林軒」に行ってみました!(南後りむ)

文芸同人「鴨林軒」の自己紹介です。