鴨林軒ハテナ支店

文芸同人の鴨林軒です。

【自己紹介】隠れ家的料理屋「鴨林軒」に行ってみました!(南後りむ)

 

 3丁目のY字路を曲がってまっすぐ進むと、突き当たりに寂れた小料理屋があります。細々と営まれているそのお店は、「鴨林軒」といいます。

「『おうりんけん』と読むんですけどね、どうも一見さんには読みづらいらしくて、いつもいつも『かもばやしけん』とかって、間違えられるんですよ。まあ、そもそもそんなにお客さんも、来ないんですけどねぇ」

 のんびりとした調子で笑うのは、店主の広瀬喜六さん。気難しそうな方かと思いきや、存外柔和な方のようです。

 さっそく食事を、とお品書きを見てみると、どうも様子がおかしいことに気がつきました。最初に「今月の食材」とあるのはまあ良いのですが、その先が奇妙なのです。お品書きにある料理名それぞれに、「料理人」として異なる人物の名前があります。どういうことかと首を捻っていると、広瀬さんが相も変わらず笑顔のまま、教えてくれました。

「料理人がね、私も入れて4人いるんですよ。まぁ当たり前と言っちゃあ当たり前なんですがね、4人とも得意なジャンルってのが、まぁ違うわけでございまして。そんな4人が、月替わりで決まる食材をね、どう調理するかってのが、うちの醍醐味なんですわぁ」

 なるほど、と頷いていると、広瀬さんは少しばかり申し訳なさそうに頬をかきながら続けました。

「なんで、ねぇ、今日は私の作るこちらの料理しか、お出しできないんですよ。そんなわけで、そこんとこすんませんが、まぁひとつよろしくお願いします」

「それじゃあ、こちらの料理をひとつ」

「はいはい、まいどありぃ」

 広瀬さんはそう言うと、のんびりと調理に取り掛かりました。この様子だと、まだまだ時間がかかりそうですね。料理がくるまで、しばしゆるりとすることにしましょう。

 本日のリポートはここまで。えっ、料理の感想は? と思われた方もいらっしゃるでしょうが、そこはぜひ、ご自分の“舌”で確かめてみて欲しいところです。

 それでは、またいつかお会いいたしましょう。どうもありがとうございました。

(この小説はフィクションです)


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鴨林軒は以下の4人が運営しております。

・唐桶つばめ(からおけつばめ)
北海道大学総合教育部所属。二年次からは経済学を履修する予定です。好きな批評家は一ノ瀬俊也。野球観戦が好きで推しはスワローズです。

 

・南後りむ(なみのちりむ)
グァグァグァ、ガーグァガ。グィググェグィ、ググィ。グォギグァギグァグ、グェググォ。(早稲田在籍。ミステリ好き。都市開発と鉄道。)

 

・西文貴澄(にしぶみきすみ)

中東・イスラーム史やジェンダー文芸論を勉強中。好きな作家は凪良ゆう、好きな歌人は柳谷あゆみ。スンドゥブチゲが食べたい。どっかの文キャンに出没する。

 

・広瀬喜六(ひろせきろく)
芸大芸学で美学、美術史学を学習中。好きな作家は尾辻克彦ウンベルト・エーコ、好きな芸術家は赤瀬川原平です。家族は犬を飼っているけど猫派。牛肉より鶏肉。